はじめに
今回のクラウド環境は、Nutanix CE の Blueprint (VM のテンプレートのようなもの) が提供されている Ravello と、Nutanix 社による Test Drive を想定しています。
ただ、Nutanix CE をクラウド的にためすなら Ravello より Test Drive のほうがよいと思っています。
この投稿は Nutanix Community Meetup #17 でお話した内容を、若干補足修正しています。
1. Ravello という、デモ/ラボむけのクラウド サービスがある。
Ravello Smart Labs は、ネステッド ハイパーバイザを使用できる、デモ/ラボ環境むけのクラウドサービスです。このサービスで使用するソフトウェアやそのライセンスは、基本的に利用者が自分で持ち込むスタンスになっています。
もともとは Ravello Systems 社によるものでしたが、現在は ORACLE に買収されて Oracle Cloud の一部になっています。ちなみに最近では従量課金の情報も Oracle Cloud Service の画面から確認可能になっています。
Ravello Systems: Virtual Labs Using Nested Virtualization
Ravello の Web UI は、下記のような感じです。
Nutanix CE の AHV は KVM ベースなので、Ravello では ネステッド ハイパーバイザ の KVM として起動させることができます。
2. 主なパターンは3つ。
Ravello の Nutanix CE Blueprint を利用する。
Ravello では、VM (+そのラボ環境) をテンプレートとして提供していて、これを Blueprint と呼んでいます。この形態で提供されている Nutanix CE は「Nutanix CE On Demand」と呼ばれています。
NUTANIX COMMUNITY EDITION (初版)
https://www.ravellosystems.com/repo/blueprints/65209959
NUTANIX COMMUNITY EDITION (2016.03.13)
https://www.ravellosystems.com/repo/blueprints/69605214
以前の Meetup #7 でも紹介した、CE On Demand の利用イメージです。
そして CE On Demand の利用方法です。
Nutanix CE の .img ファイルをアップロードして、VM に自分でインストール。
もっとも自由度の高い利用方法は、自分で Nutanix CE をインストール/再セットアップしてしまうことです。頑張れば、マルチノードの Nutanix クラスタを構成できます。(が、最新の Nutanix CE だとスペックの問題か?うまくいかないので、マルチノードを Ravello で構成する場合は少し古い CE で試したほうがよさそうです)
Test Drive を利用する。
Test Drive は、Nutainx の Web サイトから申むことで利用できる Nutanix CE 環境です。ただし、2時間の時間制限があります。
https://www.nutanix.com/TestDrive
Test Drive についていくつか・・・
- 登録するメールアドレスは、フリーメールのアドレスだと NG のようです。
- CE の環境が準備できると、数分(15分くらい?)後に登録したメールアドレスに Prism にアクセスできる URL を含むメールが来ます。Test Drive は 2時間という制限があるので、そのメールが見られる状況のときに登録するとよいと思います。
- 2時間が過ぎてしまったとしても、再び上記の Web サイトから Test Drive を申請することが可能です。
- これも裏は Ravello かな、と思っていたのですが実は別環境のようでした。すみません。
Test Drive の様子については、NTC の Ito さんの投稿が参考になります。
3. NEXT アカウントは Ravello だとしても必要。
Nutanix CE の利用には、USB イメージ(.img) ファイルのダウンロードと、Prism への初回ログインの時に Nutanix の NEXT コミュニティのアカウントが必要になります。これは Ravello で利用する場合でも必要で、自分でのインストールでも、Blueprint でも、Prism への初回ログインの時に認証が必要になります。
ただし、Test Drive ではアカウント不要です。
4. 使用できる Nutanix CE は、普通の CE。
Ravello で利用できる Nutanix CE は普通の CEであり、Blueprint を利用したとしても、通常のインストーラからインストールしたものと同じです。CE なのでハイパーバイザは AHV のみ(ESXi などは使用できない)です。
ただ、Blueprint の CE は最新版ではなく、むしろ古いです。また、Test Drive を使用したとしても、最新版の CE ではないようです。一方、Blueprint を利用せずに自分で .img ファイルからインストールするれば、はじめから最新版を利用できます。
Ravello でもインターネット経由のダウンロードによる Prism からのワンクリック アップグレードが可能です。また、バイナリ&メタデータアップロードでのアップグレード(下記のような)も可能です。ただし、Ravello での CE バージョンアップは、Ravello の性能の問題により根性が必要かもしれません。時間がかかったり、リトライが必要だったりという意味で・・・
しかし、そもそも新機能をためすために十分な性能が、Ravello では得られないので、多少バージョンが古くても、実のところ問題ない気もします。
5. VMのスペック上、Ravello では無料枠が使えない。
トライアルなど、Ravello を無料枠で利用可能なケースがあります。しかし Nutanix CE を起動するには、有料になります。
まず、Blueprint は無料で入手可能です。そして Ravello での Blueprint 機能の利用自体も無料です。しかし、Nutanix CE の要件をみたすスペックのVMを起動するためには、Ravello が有料になる契約が必要です。
ということで、Ravello と契約してクレジットカード登録(いまであれば ORACLE との契約)が必要になります。ただし ORACLE による買収もあり昔と今は違いそうなので、正直なところ現状は不明です・・・(私はすでに契約ずみなので)。
ちなみに、ORACLE との Ravello の契約は個人でも可能でした。しかしガチな契約書(物理的に製本された)が出てきたりして衝撃を受けました。
一方、Test Drive であれば無償で、Ravello の契約も不要なので手軽に利用できます。
6. Ravello は物理マシンとの機能的な違いはないが、スペックがギリギリ。
そもそも Nutanix CE をVMにインストールしても、物理マシンにインストールしても違いはなく、Ravello の Blueprint を利用したとしてもそれは変わりません。
ただし、Ravello で利用する場合は、VM スペックの上限が Nutanix CE の HW要件のギリギリです。また、Ravello 自体があまり性能が出ないので、CE は動かすのがやっと、といった感じになります。
Ravello の VM へ割り当てられるリソース上限
- vCPU は 4
- メモリは 16GB
- (HDD容量は問題ない)
ちなみに、インストール時の HW要件チェック自体は、最近の Nutanix CE では Ravello を認識してパスしてくれます。(ただしインストール~クラスタ作成が成功するかは別です)
7. アクセス方法について
Ravello では、通常の Nutainx CE 同様に Web ブラウザや SSH クライアントなどでアクセス可能です。ただし、パブリック IP の NAT 経由でアクセスすることになります。Blueprint でデフォルトでは解放されていないポートについても、設定すればアクセス可能になります。
CE にアクセスできない場合などは、Ravello のコンソールから AHV の画面を開いてトラブルシュートすることが可能です。
ちなみに、Test Drive は、Prism の Web アクセスと CVM への SSH 接続(CVM から AHV への SSH も)が可能です。
8. AHV 上の VM は各自用意する。
Ravello の Blueprint でも、Test Drive でも、Nutanix CE 上に VM は用意されていません。ゲスト OS を起動させてみるとなると、Nutanix CE環境の起動とは別に、自分でなにか用意する必要があります。
たとえば、Prism のイメージサービス を利用して、下記のように ゲスト OS を用意することになります。
- ISOイメージをアップロードしてからゲストOSインストール
- イメージファイルをアップロードして、VMに割り当てて起動
とはいっても、Ravello 上の CE では ISO のアップロードも大変なので、たとえば CirrOS のような軽量 OS 利用したりすると便利かなと思います。
9. 他の人にNutanix CE 環境をわたせる。
Ravello では、Blueprint から複数の Application(Nutanix CE 環境)を作成、起動することができます。これはマルチテナント構成になっていて、IP重複なども気にせず利用できます。
Ravello で Nutanix CE を使用する場合は、Ravello (ORACLE) の契約という手間がありますが、だれか(どこかの会社)が Ravello で Nutanix CE を起動できるのであれば、他の人に環境を渡すことが可能です。
Prism や AHV / CVM のアドレス & ユーザ & パスワードを渡すだけでなく、Ravello のApplication ごと渡すことが可能です。そのため、利用者側で Nutanix CE のパワーオン / オフをすることもできます。また、利用期間の制限(たとえば 2時間で Token 無効化する、というような)も可能です。
10. Ravello 環境内 / 環境間のNutanix クラスタで相互接続できる。
Ravello の Application 間は、必要なポートが解放されていれば、相互にパブリック IP 宛のアクセスが可能です。
また、一つの Ravello Application 内で、複数の Nutanix CE を起動することもできます。Ravello の Application 内の場合は、相互にローカル IP でアクセス可能です。
これにより、たとえば Nutanix クラスタをまたいだレプリケーションや、DR 機能をためすことも可能です。
個人的な Nutanix CE on クラウドの所感
Ravello よりは Test Drive がおすすめ
何かマシンが用意できるなら、基本的に Ravello より物理マシンがおすすめかな、と思います。Ravello は機能的には便利なのですが、CVM / Nutanix CE 自体の HW 要件が最近 徐々に上がっているようで、ギリギリ動くといった感じです。ローカルでの ネステッド VM の環境や、HW 要件未満の PC だとしても、Ravello よりは快適に操作できるかなと思います。
Ravello は機能的には便利であるものの、Prism のイメージサービスへの ISO アップロードや VM へのゲスト OS インストールに耐えられず、CVM や Prism が落ちてしまったりします(その場合は リトライ するとか)。今時点の最新版(ce-2017.02.23-stable)であらためてマルチノード クラスタ構成をしようとしたら、それもちょっと無理そう・・・
また、新しい Blueprint がなかなか出なかったりもします。
なお、Test Drive はそこそこ快適でした。クラウドで Nutanix CE を体験するなら、Test Drive で十分ではないかと思います。Test Drive には 2時間の制限があるものの、時間内で試せないようなものは、Ravello でやろうとしてもスペック(VM のリソース上限)的に Blueprint / 自己インストールどちらでも満足に使えないことが多く、ちょっと応用的なことをためすとなると、すぐにクラウドではつらくなって物理マシンを用意して CE をインストールしたくなると思います。
私が思う クラウド環境での Nutanix CE の試用どころ
多くの VM を起動してみたり、AFS や、Prism Central のような HW 要件が高い機能を使用したりすることは、Ravello / Test Drive では VM スペックの上限の都合により実行すことができません。Ravello / Test Drive では、最初の入門として Prism の UI を体験する、というところに限られるかなと思います。
入り口として、クラウド環境で Prism の操作感を体験して、「イケる」という感触をえたら、次のステップとして下記のような・・・
- Web UI や CLI での より本気度の高い操作手順確認や、新機能(Tech-Preview 系) の評価をするなら、ある程度 HW リソースのある物理マシン(空いているサーバがあれば・・・)にインストールして、オンプレでの CE を使うとよいと思います。
- API の確認や、スクリプトの開発などをするのであれば、 それもオンプレでの CE で、ただしネステッド環境でもいけるかなと思います。Nutanix Cmdlet (PowerShell) による Prism へのアクセスにしても、Ravello だと応答が遅くなかなかつらい感じなので、ネステッド環境でもオンプレに CE を用意したほうがいいかなと思います。
- 実環境での利用をターゲットとした新機能(GA されているような)の評価や、実際のノード拡張/縮小や性能検証などをするのであれば、CEではなく、なんとか商用版のアプライアンスを用意したほうがよさそうです。CE はほぼフル機能が使えるとはいえ、やはり商用版とは違いがあると思うので・・・。ほかにも、 ACS(Docker 連携)や OVM(OpenStack 連携)などをためすにしても、最新版の入手にはアプライアンスの購入や Nutanix のパートナーの協力などが必要です。
ということで、まずは Test Drive をポチってみていただければと思います。
おまけ
Meetup #17 にて Nutanix の鼻からミルクさんに激写された、やってみた系 NTC。
@gowatana さん、Nutanix CE on RavelloとTest Driveの紹介#Nutanix pic.twitter.com/2N2dmFz0MI
— 鼻からミルク a.k.a hana(ry (@hanakara_milk) 2017年4月28日
以上。
つづきは Slack などで・・・
そして私は オンプレ Nutanix CE 派に・・・